私が小学生の頃1980年代に始まったマンガが北斗の拳でした。そこの出だしには、19xx年に核戦争が起こるという世紀末像が描かれていました。ノストラダムスの予言というものもあり、21世紀は訪れないかもしれないと子どもながらに思っていました。それが21世紀になって、四半世紀過ぎたわけです。時の経つのは何と早いことか。講義でオプトジェネティクスについて話すときに、革新的な技術という枕詞をつけますが、その開発は2005年で、その頃に生まれた今の学生にとっては革新的でもなんでもなく、生まれたときからあった技術なわけです。
次の25年の間に私は健康であれば、還暦(60才)、定年(65才)、喜寿(77才)を迎えられるかもしれない。2050年がどんな時代かわかりませんが、今、私の研究室に所属している20-30代のメンバーが社会の中枢で役割を果たしていてほしい。その願いを叶えるために、次の四半世紀の前半分をいわゆる現役世代として過ごす私達50代前半は何をすれば良いのか。我々世代の各人に答えがあろうかと思いますが、私の答えは教育です。
慶應義塾には福澤語録があります。私はそのすべてに腹落ちしているわけではありませんが、半学半教は好きな言葉です。元々は教師と生徒の関係性をあらわす言葉ですが、私はこれを共同研究者との関係性にも拡大解釈しています。自分と他者とがお互い学び合っていく関係性にも当てはめられます。言いたいことは、双方向に教え合う関係じゃないと学びなんて成り立たないということです。私が学生に教えるのはただのきっかけであって、そのきっかけを掴む手助けをする、問いを言語化するのを手伝う、問いを解く具体的な方法を実践する場を与える。きっかけを掴んだ学生から私も学ぶ。私と学生の差なんてたかが20-30年の違いであり、数百年前から横たわる疑問の前には誤差程度の差しかありません。昔自分が悩んだ経験から、学生が悩んでいることがちょっと想像できる。それだけです。それで教授とか言っちゃっているわけですが、私も学徒として日々学んでいます。
このラボにはいくらでも学ぶチャンスがあり、いくらでも試すチャンスがあります。存分にそのチャンスを活かして、研究を楽しんでください。ラボメンバーで良くしゃべることが大事です。ラボメンバー同士がプロジェクト内容を知り合うことで、私が何を知りたいと思っているか推測できるようになります。ラボを訪ねてくれる人と良くしゃべって吸収することが大事です。その訪問者は私と関係があるから訪問しているわけで、その関係性を知ることで皆さんの研究に関連した知識の幅を広げることができます。私が知りたいと思っていることに研究費を配分しているので、私の知りたいことと皆さんの知りたいことの方向性が一緒なら、研究資源を効率よく使えます。一般社会の飲み会で仕事の話しをすると嫌われますが、ラボの飲み会では研究の話しをどんどんしてください。研究仲間をよく知ることが半学半教の初手です。
年の初めにラボのモットーを再掲します。
Beauty is truth
研究を楽しむ
共同研究者から学ぶ
2024年の10大ニュース
1. 森藤さんによってAAVのパッケージングがラボ内で立ち上がる
2. 5名の学生・インターンが勤勉(Mariateresa, Sym, Luisa, Kei, Mie)
3. VGAT研究にラボメンバーを集中投資
4. ラボレク厚岸
5. ISN-JNC flagship school@Naxosで講師を務めた
6. さっきー合流・木村さん栄転
7. 内耳研究進む(Cap, Chisato)
8. AAV遺伝子治療の前臨床試験に予算がつく。Opto凄い。アムステルダムでの世界MLC家族会でも発表。
9. Demis Hassabisいい人だった
10. 東京バイオからの2名が歴代最高にgenotypeが上手
2025年の予定
神経科学会のplenary lecture(Maiken Nedergaad)の座長務めます
神経化学会のISN-JSN joint symposiumでChristine Denny, Eero Castren呼びます
2025年8月30日に先端研プレ同窓会やります