精神医学に興味のある学生、若手医師の皆様へ

  • 研究に興味のある学生、若手医師の皆様へ (2020.7.13)


    研究は派手ですが、地味です。この言わんとするところは、刈り取った成果とそれを得るための革新技術は派手だが、成果に至るまでが地味だということです。派手さは長続きしません。遠い将来を見据えて、コツコツと地味な作業を続ける辛抱強さが求められます。

    では将来何にでもなれる皆さんに私は何を求めるでしょうか。ただひたすら耐えなさい、がその答えであれば誰もついてこないでしょう。研究は楽しい、という研究者の多くが心に秘めている想いを皆さんが共有することを求めます。それが共有できない場合は、研究は楽しくないわけですから、もっと別のことに時間を費やすべきです。他の研究室にうつる、研究分野をかえる、研究しない、いくらでも選択肢があります。

    研究が楽しいか楽しくないかを知るにはどうすればよいか。行動についての答えは一つで、実際にやってみることです。やってみて、自分が楽しんでいるかどうか。これを調べるのです。実際にやってみると、上手く行かないことばかりです。分かっていないことばかりです。曖昧なことばかりです。研究者の多くは、この曖昧なところ、不思議なところ、意味不明なところに面白さを見いだしています。「そうだったのか」と分かる瞬間。確信する瞬間。これが楽しいのです。皆さんは勉強が得意でしょうから、教科書や論文から新しいことを知るでしょう。これを楽しいとは言いません。自分が組み立てた実験系から答えを出すとき、体を使って答えが出たときが楽しいのです。

    体を使ってみることを勧めました。研究が楽しいかどうかでもう一つ大事なことは、真実に触れているかどうかです。不思議なもので、キャリアの長短に拘わらず、研究者は日々研究に続けていると必ず真実に触れます。ここがポイントで、まだ触れている段階です。これをぐっと掴む。スッポンのように放さない。そして引き釣り出して全容を明らかにするのです。ここまでやれたら最高です。そんな経験が若いときからやれたら凄いことです。そして、そんな凄いことが若いときからもやれるんだということを亡くなった吉田君が体現しました。

    何が真実かわからないでしょう。その時のヒントは、扱っている対象が美しいかどうかです。美しさは真実です。この研究室において、私は美しい形を重視します。高田さんは美しい時系列データを重視します。美しい、楽しいに共感できる方と一緒に研究をやりたいです。これまではこの行動原理で上手く行ってきました。今後もこの行動原理は変えません。

  • 精神医学に興味のある学生、若手医師の皆様へ(2012)

    本研究室の使命に、人材の発掘と育成があります。リサーチマインドのある精神科医を、精神医学の現場を知る基礎研究者をそれぞれ発掘し、10年後、20年後のリーダーを育てます。これは私たちの理念です。正直なところ、当事者である皆さんには押しつけがましいことですよね。

    皆さんは、精神医学研究は楽しいのか、研究は自分に向いているのか、研究職に就けるのか、研究職で生計を立てられるか、といったことが一番気になるところでしょう。最終的には皆さん自身で人生を切り拓いていくしかありませんが、その判断、決断の前に色々と経験したいというのが本音でしょう。

    是非この研究室で色々と経験して下さい。特に美しいものに触れて下さい。美しさは真実であり、美しさは感動の源泉です。私たちとの経験の中で美しいものに出会えなければ、このラボは向いていないと思います。まだまだやり直しがきく年齢ですから大丈夫です。

    ラボの経験だけでは不十分でしょうから、一流の研究者を多く紹介します。その方々との交流から人生について様々な角度から考えて下さい。きっと役に立ちます。

    技術面については、難しいことを考える必要はありません。私自身、30才になって初めて大腸菌を扱いました。こんなにも遅いスタートですが、それでも何とかこの10年間生き残ってきました。今の皆さんに大事なことは、技術にたじろくことなく、とりあえず始めてみることです。

    一緒に感動しましょう。
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